HOTEL CAFUNE
Q.観光業の枠組みを超えた、ホテルのあり方とは?
ホテルは観光客のためにあるのか?
一般的に、宿泊業は観光業の従属産業であるとされている。それは紛れもない事実に違いないが、あるときふと、果たしてホテルとは観光業のためだけに存在するのだろうかと考えるようになった。時は2020年、コロナショックの最中で、観光という生業の儚さを思い知ると同時に、ホテルという「人が人をケアする場所」には観光の枠組みを超えた、未知なる可能性が存在するように感じられてならなかった。そう考えた時に、「自宅とは違う場所で生活を営むことができる場所」「ソフト・ハードの両軸から理想の生活をコーディネートすることができる場所」というホテルの持つポテンシャルを引き出しつつ、現代社会において課題となっている、「新しい家族を迎えた人々」がより自分らしい輪郭を保ったまま、新しい生活に適応していくための空間ー産後ケアリゾートという可能性があるのではないか、と考え始めた。
A.ライフステージの変化に寄り添う、人生と生活をデザインするホテル
素晴らしいひとときだけではなく、素晴らしい人生の道標としてのホテル
出産後の母親の心身をケアして回復へ導いたり、家族が安心して育児に取り組めるようにサポートするための宿泊施設「産後ケアリゾート」。韓国・台湾・中国など、日本と文化的にも近しい東アジアでは、文化として産後ケアが根付いている一方で、日本では利用率も知名度も圧倒的に低い状況が依然として続いていた。ホテルという生活空間を通じて、人々の人生のあり方をデザインし、新たな文化を根付かせる、「産後ケアリゾート」の可能性を感じ、自社事業として取り組むことを決めた。
「ファミリーハネムーン」というコンセプト
羽田空港からも程近い、川沿いにある「川崎キングスカイフロント東急REIホテル」。そのフロアの一部をお借りする「ホテル・イン・ホテル」形式で『HOTEL CAFUNE』が2022年5月にオープンした。専門家のサポートを受けながら心身の変化をうまく受け止めながら新しい生活を始めていく、そんな“新しい家族のキックオフ”をしていくための「ファミリーハネムーン」というコンセプトのもと、特定のジェンダーやパートナーシップに閉じない思想のもと、ブランドを開発。
助産師をはじめとする医療従事者とホテリエのコラボレーション
『HOTEL CAFUNE』では、助産師・看護師をはじめとする医療従事者に加え、保育士やベビーシッター、また協力医など、幅広い職種のスタッフとのコラボレーションによって運営されている。それゆえ、従来のホテル以上の体験価値を提供することができ、人生におけるターニングポイントとなる「産後」の時期、及びそこから連なる生活の積み重ねの総体にわたって、生活や人生のあり方をコーディネートする「ライフデザインホテル」としての役割を果たしている。
ライフデザインホテルの見せる宿泊業の可能性
ホテルは、閉ざされた空間であると思う。あたかも老若男女を受け入れているかのように見せかけて、実は健康で、経済的・時間的にゆとりがある人々しか受け入れることができていない。でも、見方を変えれば、ホテルとは生活のコーディネートをすることができる場所であるとも言える。そう考えれば、産後の家族のみならず、さまざまな状況に置かれた人々の生活を、そして人生を、もう少し豊かにすることができるのではないだろうか。
文責:龍崎 翔子・角田 貴広
COLUMN担当者コラム
マネージャー山野莉央
CAFUNEが "ホテル"である理由
産後の体は、交通事故にあったのと同等の大ダメージを受けている。里帰り又は自力で頑張るしかないという産後の当たり前を疑うには十分すぎる事実だと思う。そこに第三の選択肢として「産後ケアホテル」が存在している。自分自身とゆっくり向き合い、新しい命と共に歩むこれからの人生を見つめる場所である。CAFUNEでは長期滞在の方が多い。ゲストと長い間一緒に滞在を作れることはホテリエとしてとても嬉しいことだ。ホテルに滞在するということ=価値観や経験をアップデートすることだと私は考えている。出産をしても自分らしくいられるようにサポートできる、私たちはそんな”ホテル”であり続ける。体を治すという目的だけならば病院で十分なのだから。
INFO
- 所在地
神奈川県川崎市川崎区殿町3-25-11
- 時期
2022年5月オープン
- 用途
ライフデザインホテル
- 客室数
8室
SCOPE
- ホテル開発
- ホテル運営