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    ホテル開発・支援
京都・宮津

Q.地方に宿泊需要を生み出すホテルとは?

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「新規事業でホテルの開発をやってみたい」ゼロスタートで始まった挑戦

とあるご縁を通じて、新規事業で宿泊事業への参入を検討している京都府教科図書販売株式会社をご紹介いただいたのが、このプロジェクトのスタートだった。京都の教育機関や書店等への卸業を本業としつつ、学習塾やサービス付高齢者向け住宅などの事業展開をしている、老舗ながらチャレンジングな企業の新しい挑戦。ホテル事業は本業と全く異なるビジネスのため、水星が開業まで伴走させていただく運びとなった。具体的な遊休物件はもちろんエリアさえ決まっておらず、文字通りゼロから始まったプロジェクトだった。

A.土地に根付く風土と文化を体現したホテル

土地に根付く風土と文化を体現したホテル

物件との出会い

最初の半年間はひたすら土地探しに従事した。投資規模の観点から、関西圏の地価が一定抑えられたエリアを条件に模索する中で、京都府北部に位置する宮津市内の物件と出会った。福祉センター跡地として市が建設・保有していた物件で、解体・リノベーション工事が必須となるが、安全性や強度への安心感が決め手の一つとなった。
宮津は日本三景の一つである天橋立を擁する海辺の街で、年間230万人の観光客が訪れるような高い観光ポテンシャルが感じられた。
宮津を含む、日本海に面する京都府北部エリアは「海の京都」とも呼ばれており、地域一体となった活性強化の取り組みも進行している。

「海の京都」宮津の歴史と文化

宮津は、平安時代の辞書「和名類聚抄」や奈良時代の木簡に記載されるほど古い歴史を持っており、その地名は「宮(神社)に近接する津(港)」にちなむと考えられている。こうしたリサーチの中で、宮津という土地は、日本と海外を結び、人や文物が交錯する場所として海を起点に発展してきたこと、また歴史的な側面のほかに、京都府の中で海の京都エリアは京都と聞いて真っ先に想起されずらい、「B面」的な側面も宮津の大きな特徴と捉えた。

秋の早朝の天橋立
秋の早朝の天橋立
ホテル名サイン。建物の歴史を伝えるために、あえて福祉センターの文字を残すことにした
ホテル名サイン。建物の歴史を伝えるために、あえて福祉センターの文字を残すことにした

「水屋」というコンセプトが持つ意味

地名や歴史から想起される神聖なイメージや、表舞台ではなくそこに行き着くまでの経由地という特徴を掴んだ上でコンセプトメイキングを進める中で、「水屋」というワードを知った。このワードは複数の意味を持っており、一つは社寺で参詣人が口をすすぎ手を洗い清める所を指す。もう一つは、茶の湯で、茶室の隅に設けて茶事の用意をととのえたり、使用後に茶器を洗ったりする場所を意味する。こうした意味から、長い歴史の中での、京都における宮津という存在を、「水屋」で例えることができると考えた。図らずも地名とのアナグラムも感じられることから、ホテルのコンセプトを「水屋」に、ホテル名を「mizuya」とした。

「鑑賞の海」宮津の土地の空気感を表現した「菓寮 浮雲」

mizuyaの象徴の1つとして、朝食会場とカフェ&バーの機能を持つ「菓寮 浮雲」では、水の存在を中心に据えた空間づくりを行った。
テーブル上を水がゆるやかに流れ、天井にはその水影が反射する。平安時代の宮中行事「曲水の宴」から着想を得ており、小川に盃を浮かべ、流れてくる盃が目の前を通るまでに和歌を詠む──そんな優雅な遊びを、現代的に解釈した。
各客席に貝殻や松ぼっくりなどの印があり、同じ印のお盆が流れてきたら手に取るという遊び心も加えた。
この体験は、宮津の海を「鑑賞の海」と捉え具現化したものであり、同時に、世界と京都を結んできた宮津ならではの体験となっている。

全客室に備えた水屋
全客室に備えた水屋
藤織りによる客室ナンバーサイン
藤織りによる客室ナンバーサイン
手織り機とちりめんのカーテン
手織り機とちりめんのカーテン
朝食会場 兼 カフェ&バーの機能をもつ菓寮 浮雲
朝食会場 兼 カフェ&バーの機能をもつ菓寮 浮雲
地域の食材を使った朝食御膳
地域の食材を使った朝食御膳

文化に触れ、興味を生むコンテンツ

海の京都エリアで育まれた文化を"試着"できるホテルにすることを目指し、細部までこだわりを持って計画した。宮津で受け継がれる、縄文時代を起源にした日本最古の織物とされる「藤織り」によって編み出された客室ナンバーのサイン。丹後で発展し経済的もに長くエリアを支えてきた織物「丹後ちりめん」を使ったカーテン。丈夫で破れにくく、京呉服に関連した値札やたとう紙など、京都の伝統産業を支える存在を担ってきた「黒谷和紙」によるアートや壁面加工。郷土料理「ばら寿司」から発想を得た朝食御膳。
これらによりそこかしこに土地の息吹が感じられ、伝統的な産業や工芸、食文化に触れられる場を実現させた。

COLUMN担当者コラム

プロジェクトマネージャー松田 早也香

地方の未来とホテルの可能性

私はmizuyaのある宮津市の隣、京丹後市で生まれ育った。宮津は幼い頃から馴染み深く、遠足先は天橋立、夏は灯籠祭りなどで幾度となく訪れた場所。機織りのガッシャンガッシャンという音は生活の一部だったが、伝統的な産業はどんどん衰退し、学校は合併され、街の活気も減っていく一方。今、そういう街が日本中にあるのだと思う。けれどホテルには、世界中から人を招き、衣食住を通じて土地の魅力を伝える力がある。そこに住む人たちにとっても、自分たちの街により愛着が湧いたり、誇りに思うきっかけになれる。そう信じているし、これから、より多くの人生の旅路にmizuyaがあることを願っている。

INFO

オーナー

京都府教科図書販売株式会社

オペレーター

株式会社京都丹後企画

所在地

京都府宮津市鶴賀2085

時期

2025年5月1日オープン

用途

ブティックホテル

客室数

9室

mizuya 公式サイト

https://mizuya-kyoto.com/

cafe & bar 菓寮 浮雲 公式Instagram

https://www.instagram.com/karyo_ukigumo

SCOPE

  • ホテル開発
  • ホテル運営
  • WEB制作
  • 空間デザイン
  • コンセプト策定
  • 体験コンテンツ設計
  • ロゴ・ネーミング制作
  • オペレーション設計

CREDIT

  • ホテルプロデューサー龍崎 翔子
  • プロデューサー大丸 勇気
  • プロジェクトマネージャー松田 早也香
  • アカウントプランナー高見 将大
  • ディレクター山野莉央
  • ディレクター笠井 明

PARTNER

天水義敬建築事務所 天水 義敬 清水 彩香 credenza 堀 正樹 株式会社川嶋建設
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