HOTEL SHE, KYOTO
Q.京都という観光激戦区で、旅の目的地となるホテルとは?

京都の辺境「東九条」でホテルを営む意味を考える
京都駅の裏、東九条の街がまだ注目されていなかった時期に、逆張りの発想で開業したHOTEL SHE,KYOTO。その後、インバウンドバブルの勢いに乗って、京都のホテル開発は激化。競合がしのぎを削る中、旅の目的地となるホテルとしてのブランドを確立するために、開業後3年で全面リニューアルを実行した。新しいコンセプトを企画する際に考えたのは、私たちがこの街でホテルを営む意味。この街ならではの空気感を織り込んだシビックプライドを高めるようなホテルをつくりたい。そんな思いから生まれたのが、「最果ての旅のオアシス」というコンセプトだった。「京都の辺境」と揶揄されることもあるこの街の片隅に、新しい京都の街や観光スタイル、トレンドカルチャーを発信する旅人たちの楽園をつくるプロジェクトが始まった。
A.旅人の渇きを癒す「最果ての旅のオアシス」

空間と宿泊体験に世界観を実装する
画一的な京都のイメージを引き剝がして、街の空気感を宿泊体験に織り込みたい。そんな思いから「最果ての旅のオアシス」というコンセプトが生まれた。「荒涼とした大地を真っ直ぐに貫く道と、突如として現れる一軒のモーテル」という物語を膨らませ、長い道のりをたどってきた旅人たちが羽を休め、また遠くへと旅立っていくことのできる束の間を安らぎを提供する空間を目指した。ホテルのフロントの横には、BIG BABY ICE CREAMプロデュースのアイスクリームパーラーを併設。朝食のメニューはアメリカンダイナー風のワッフル、また、アメリカ文化の象徴でありアンチテーゼでもあるクラフトコーラを提供するなど、徹底した世界観の作り込みを行った。結果、リニューアル以前5%程度だった直接予約率は、リニューアル後最大50%に上昇。日本を代表する観光地京都で指名買いされるホテルブランドを確立した。
新しい京都観光の楽しみ方を追求し続ける
covid-19を越えて、再び日本中、世界中から観光客が集まる京都。HOTEL SHE,KYOTOでは、様々なクリエイターやブランドとコラボレーションをしたイベントやポップアップや、季節ごとのプランの企画を通して、新しい京都観光の楽しみ方を提案している。徒歩30秒の銭湯「明田湯」の入浴がセットになった新しい銭湯プラン「シーラブズ湯」など、物見遊山の非日常ではなく、他人の日常を楽しむ観光スタイルが人気を博している。



ゲストの人生に新しい選択肢を
レコードやクラフトコーラ、色とりどりのアイスクリームにレトロな銭湯等、HOTEL SHE,KYOTOは、ゲストがまるでアパレルショップで服を試着するような感覚で、ライフスタイルを試着することができる場所。その小さな新しい選択がゲストの人生を豊かにすることを願っている。




来るたびに新しいカルチャーとの出会いがあるホテル
HOTEL SHE,KYOTOでは開業以来、様々なかたちでゲストと新しいカルチャーとの出会いの場をつくっている。詩人の最果タヒとコラボレーションをした「詩のホテル」、イラストレーターのたなかみさきさんとコラボレーション「ホテルし~」などのコンセプトルーム、アパレルやアクセサリーブランドのポップアップストア、若手のアーティストやイラストレーターの作品を展示会等を企画。2024年からは、京都を拠点に活動する若手のアーティストの活動を応援する企画ギャラリーオアシスが始動した。
文責:金井塚悠生
INTERVIEW関係者インタビュー
Pinks Vinyl レコードバイヤー天野東成・西内隆人・中川大基
レコードを通してライフスタイルをキュレーションする
支配人の岸さんとは共有の友人が数人いたこともあり、ホテルにレコードを納品するという新しい試みを実施できることになりました。ホテルで聴くレコードを選定することは、普段のレコードショップの運営にはない、人々のライフスタイルをキュレーションしているような感覚に近いと思っています。そもそも、レコードを今まで触ったことのない人に「レコードの体験としての面白さ」を提案するという行為は普段レコードが好きな方を中心に販売をしている私たちにはとても貴重な経験となっていますし、寝る前にぴったりな曲や季節ごとのおすすめの曲など、人の生活のあり方から連想してラインナップを決めることもホテルならではで面白く、いつもお取引を通して新たな視点をいただいています。
COLUMN担当者コラム
マネージャー岸えりな
画一化されすぎた京都観光のあり方を再定義する
「京都の観光は飽和状態にある」って、最近よく聞く言葉だ。街中には「京都っぽい」もの・ことが溢れている。けれど、その「京都っぽさ」というのは一体誰が、誰に向けて作ったものなのだろう。観光業に身を置きながら、私が思う京都の魅力は、神社仏閣や伝統工芸とは少し違うところにある。私が休日に過ごす場所は大概、友人が運営するギャラリー、小さなライブハウスやクラブ、本屋さん、鴨川、そんな感じだ。だからこのホテルには、私たちが思うリアルな京都の魅力が詰まっている。ホテルと土地の関係。私たちがしているのは、ローカルに新しい魅力を作ることではなく、その街に既にある空気感や個性を編集し、旅行体験として届ける作業なのだと思う。
INFO
- 所在地
京都府京都市南区東九条南烏丸町16
- 時期
2016年4月オープン / 2019年3月リニューアルオープン
- 用途
ブティックホテル
- 客室数
33室
SCOPE
- ホテル開発
- ホテル運営