HOTEL SHE, OSAKA
Q.「ライフスタイルを試着する」メディアとしてのホテルとは?
ホテルは衣食住全てをつめ込むことができる箱
「ホテルは衣食住全てをつめ込むことができる無限の可能性を持った箱(空間)である」ずっと心に抱いていた仮説を実証すべく、挑戦したまだ誰も見たことがない「メディアとしてのホテル」の開発プロジェクト。他の人との予定不調和な出会いがあり、土地の空気感を感じられ、いつもと違うライフスタイルを試着することができるホテル。はじめて自社で企画したコンセプトを空間や体験に落とし込むことに成功したHOTEL SHE,OSAKAは、水星のホテル開発の原点とあり、今では世の中の新しいスタンダードとなったライフスタイルホテルやホテル巡りカルチャーが生まれるトリガーとなった。
A.街や文化、人との出会いがあるホテル
街の空気感からホテルの空間と体験を考える
大阪市の西、ベイエリアの玄関口に位置する弁天町。戦前から高度経済成長期にかけて、港湾都市として繁栄した面影を残すこの街には、赤煉瓦の倉庫街や造船所、錆びたコンテナやクレーンなどの工業都市的な風景と、かつて港湾労働者で賑わった銭湯や角打ち、喫茶店などの昭和の下町的風景が入り混じる。時の試練を越えた産業遺構や無機質な高架の武骨な手触りと、人の営みの艶めいた情感。そんなこの街の空気感を元に「インダストリアルセクシー」というコンセプトを設定。古いもの、工業製品の持つ独特の色香をテーマに、工事中のホテルの建設予定地のコンクリートの上にベッドを置いて、キービジュアルを撮影。当時、全国的にまだ少なかったライフスタイル提案型のホテルの先駆けとして、大きな話題となった。
ゲストと音楽を繋ぐ空間メディア
全室にレコードプレイヤ―を設置しているHOTEL SHE,OSAKA。開業以来、音楽を軸にカルチャーの発信を続けて来た。tofubeats等を輩出したtomad主催のMaltine Recordsとの共同イベント「HOTEL SHE, MALTINE β」、平成最後の夏に平成のヒットナンバーをオールナイトでプレイするという企画で、大反響を巻き起こした「平成ラストサマー」、シンガーソングライターSIRUPのアルバム「CURE」の楽曲の世界観を空間に落とし込んだ「HOTEL SHE、cure」、台湾の音楽レーベルBIG ROMANTIC RECORDSとコラボレーションしたイベント「大浪漫酒店-BIG ROMANTIC HOTEL」をはじめ、多数の音楽イベントを開催。様々なかたちでホテルを訪れたゲストに新しい音楽との出会いを提案している。
レコードから生まれる会話
カウンターの横には、レコードショップのココナッツディスクから仕入れたレコードを設置。ゲストからの希望があれば、音楽好きのスタッフがゲストのニーズに合ったレコードをレコメンドする。各部屋には、朝と夜をテーマに2枚のレコードを設置。様々なポイントで音楽をきかっけに様々なコミュニケーションが生まれる仕掛けをしている。
ベイエリアのLOCAL HUBになる
HOTEL SHE,OSAKAでは、地元の自治体や商店と密な連携を取りながら、大阪ベイエリアの新しい都市観光の可能性の探求と発信を続けている。大阪市港区の港湾都市ならではの風景や古き良き昭和レトロな商店をまとめたZINE 「OSAKA BAY DIARY」の刊行や、ホテルフタッフが地域の粋な飲食店を紹介するinstagram MAGAZINE「クラブ膝栗毛」等のメディアの制作から、地域のお店「CARABINA BREAD STAND」のパンを活用したメニューの開発、地域のイベントへの出店など、ベイエリアの 魅力ある人やカルチャーの交差点(LOCAL HUB)となることを目指している。
文責:金井塚悠生
INTERVIEW関係者インタビュー
株式会社オーディオテクニカ ブランドコミュニケーション課 リーダー掛水 聖貴 様
「音」を通して、心豊かなひとときを
HOTEL SHE, OSAKAさんからお声がけいただき、当社のレコードプレーヤーやヘッドホンを客室に置かせていただいています。スマホで気軽に音楽が聴ける時代だからこそ、アナログレコードで音楽を聴くというフィジカルな体験は特別で、目まぐるしく過ぎていく日常から離れて少しだけスローダウンできる、心豊かなひとときになるのではと思っています。ホテルを訪れたゲストの方にもそんなふうに感じていただけたら嬉しいです
COLUMN担当者コラム
マネージャー伊豆田健人
LOCAL HUBとしての機能に徹すること
ホテルはゲストに対して、“時間的・空間的な拘束できる唯一無二のサービス“であると感じる。人は夜になると寝床で眠り、朝になるとまたそこで目覚める。ホテルという空間は衣食住の一角を占めているので、ゲストへのある種の強制力がある。大阪と聞くとどこか都会的な印象があるが、このホテルが立地する港区には昔ながらの定食屋や商店街が多く、失われつつある大阪のローカルが残存している。ホテルがそれら貴重な文化へのリスペクトを持ってその地の魅力を編集することで、偶然訪れたゲストにその地の魅力を強い力で届けることができる。地域のハブとしてこのホテルが機能し続けることで、地域の発展に貢献していくことが、私たちの責務であると考える。
INFO
- 所在地
大阪府大阪市港区市岡1丁目2-5
- 時期
2017年9月1日オープン
- 用途
ブティックホテル
- 客室数
46室
SCOPE
- ホテル開発
- ホテル運営