泊まれる演劇
Q.旅の目的地となる新しいホテルのカタチとは?
既存施設の価値をエンターテイメントで最大化させる
宿泊業は観光業の付帯産業である。そんな常識さえも覆し、ホテル自体が消費者の旅の目的地となるような凄まじい魅力を併せ持つことはできないか。それも多額の設備投資をおこなわず、既存のホテル設備のまま、クリエイティブとアイデアのソフトパワーで。まもなく閑散期を迎えるHOTEL SHE, KYOTOでは、自施設の価値を最大化させる斬新な企画が求められていた。そこで生まれたアイデアの一つが、ホテル×エンターテイメントの異業種コラボレーションプロジェクト「泊まれる演劇」だった。
A.物語に泊まる
宿泊型イマーシブ・シアター「泊まれる演劇」
「泊まれる演劇」は実際のホテルに滞在しながら鑑賞・体験する没入型の演劇作品(イマーシブ・シアター)。イマーシブ・シアターとはニューヨークやロンドンをはじめ世界中で大きな話題となっている最先端の没入型エンターテイメント。客席に座ってストーリーを鑑賞する従来の舞台スタイルとは大きく異なり、イマーシブ・シアターでは物語の当事者となって作品を体験することができる。
小さな物語が集まるホテルは劇場のよう
“ホテルの真の魅力とは一体何か“。遠い海の向こうから訪れる外国人観光客、友人同士の思い出旅行、恋人がパートナーの誕生日を祝うためのサプライズ。宿泊の目的はさまざまだが、誰しもが非日常を求めて夜を過ごし、翌朝チェックアウトとともに日常へ戻っていく。そんな儚い時間はまるで物語のようで、小さな物語が集まるホテルは劇場のよう。これは我々ホテル側から発見した魅力の一つだが、一般ゲストにも伝わる魅力的なアプローチはないだろうか。そこから着想されたのが「泊まれる演劇」のアイデアだった。
エンターテイメントを通して生きる活力を届ける
「泊まれる演劇」ではホテルだけでなく、エンターテイメントの可能性も強く信じています。日常生活や仕事のストレスやプレッシャーに囲まれ、何のために生きているのか見失ってしまう瞬間。そんな時に泊まれる演劇の予定をスマホのカレンダーに入れることが一つの希望になったり、物語の中で新しい自分に出会ったり、キャラクターたちとの会話を通して心の底がじんわりと温まったり。少しでも生活者が過ごす日常への救いとなるようなエンパワーメントができればと切に願っています。
圧倒的なゲスト満足度とリピーター率
泊まれる演劇の最新公演の満足度*は98%超。また次回公演へのリピート率は75%を超える作品もあるなど、ホテルとエンターテイメントの両面において圧倒的な成果をあげている。また過去の公演では平日も含めて連日満室。多くの絶賛の声がSNS中心に溢れるなど、大変な反響となっている。(*参加者アンケートで「満足」「とても満足」が選択された割合)
文責:花岡 直弥
INTERVIEW関係者インタビュー
舞台美術竹内良亮
日常と非日常の境界、現実と非現実の狭間で
ホテルは様々な背景を持つ人が集っては去っていく、その旅情を蓄積する記憶媒体であり、脚本に描かれた架空の歴史もまた上演の一夜を経て、固有の体験として人と空間に刻まれる。泊まれる演劇というプロジェクトに関わりながら、公演毎に実感を伴って理解すること、空間づくりの上で意識することがあります。それはひと部屋ひと部屋に過去滞在した人の歴史があり、これからやってくる旅人の物語があるということ。イマーシブ(没入型)・エンターテイメントの楽しさは、変わった場所でパフォーマンスを観られる、俳優の間近で演技が見られる、物語に参加できる等たくさんありますが、その中心にあるのは「誰もが自分の場所を見つけられますように」という願いなのだと思います。泊まれる演劇がこれからも誰かの「自分の」物語を紡ぐ場所になりますように。
COLUMN担当者コラム
クリエイティブディレクター花岡 直弥
新しい価値はクリエイティブとマーケティングの相乗効果でこそ生まれる
新しい価値は他所の成功例を眺めてるだけでは生まれない。自らの奥底にある常識を疑い、業界のルールも蹴飛ばしながら、創造する足を止めない。でもただ創造するだけでは広がらない。価値として定着する前に自己満足の海に沈んでしまう。消費者が求めるのものを徹底的に追求して、価値へと昇華する組織カルチャーが必要。私たちは本当の意味で、クリエイティブとマーケティング、両方に対して真摯なチームであり続けたい。
INFO
- 所在地
HOTEL SHE, KYOTO / HOTEL SHE, OSAKAにて実施
- 時期
2019年10月プロジェクト開始
SCOPE
- 体験コンテンツ設計
- 空間デザイン
- 事業・商品開発
- others
CREDIT
- クリエイティブディレクター・プロデューサー花岡 直弥
- ステージマネージャー・運営統括飯嶋 祟