komado

    ホテル開発・支援
石川県小松市龍助町29−1

Q.町の暮らしを、どうしたら旅の価値にできるか?

komado

「日常資源」を「観光資源」へ転換する分散型ホテル

石川県小松市。白山の麓に広がるこの町は、九谷焼、加賀棒茶、鬼瓦、畳など。工芸やものづくりの美意識が、今もなお暮らしの中に息づく土地である。しかし、長く町の生活を支えてきた町家は、老朽化や後継者不足により、その姿は失われつつある。
この町の日常が、いつしか「観光」からも「地域再生」からもこぼれ落ちていく。そんな現実を前に、私たちは考えた。観光のために新しいものをつくるのではなく、暮らしの中にすでにある“価値”を見つめ直し、それを未来へ手渡す方法はないか、と。


「日常資源」を「観光資源」へ転換する。そのための新しい仕組みとして、小松の分散型ホテル「Komado」は生まれた。水星はホテルプロデュースパートナーとして、開発・空間ディレクション・ブランド構築から、オペレーション設計、運営事業者のアサインまでを一貫して担当した。

A.町の日常資源を、旅の体験へ転換する。

町の日常資源を、旅の体験へ転換する。

小松の“日々”を編む宿

「小松って、観光地としてのイメージはあまりないですよね」
プロジェクトに入りたての頃、そんな言葉を口にした。踏み込みすぎたかもしれない。けれど、こうした言いづらい本音が、地域の輪郭をそっと浮かび上がらせる瞬間があるのも確かだ。小松は金沢から南西に位置し、海と山に抱かれながら、工芸や工業、食や祭りが、暮らしの中に自然に息づいている町だ。確かなポテンシャルを持ちながらも、観光の文脈では、金沢の影に隠れてしまうことが多い。「Komado」はそんな小松の“日常”を、観光のための“非日常”へと静かに編み替える滞在拠点だ。

「町の編集点」となる宿をつくるための二つの視点

このプロジェクトには、二つの時間軸を置いている。ひとつは、宿としてきちんと人に選ばれ、続いていくこと。もうひとつは、Komadoをきっかけに、小松という町そのものが「訪れてみたい場所」として認知されていくこと。宿だけがうまくいけばいい、という話では終われない。宿は街の編集点であり、人との関係が重なっていくための装置でもある。その考え方がブランディングのあらゆる判断の土台になっていった。

江⼾時代から続く⼩松の⼦供歌舞伎
江⼾時代から続く⼩松の⼦供歌舞伎
創業から370年、小松の日常に寄り添ってきた長保屋茶舗のお茶
創業から370年、小松の日常に寄り添ってきた長保屋茶舗のお茶
特産の滝ヶ原石が生まれる石切場
特産の滝ヶ原石が生まれる石切場

小松の鉱脈は、暮らしの中の創造性にある

手がかりを探す中で向き合ったのは、派手な観光資源ではなかった。町を歩いて感じるのは、手触りのある素材、つくり手の気配、暮らしのリズム。滝ヶ原石をはじめとする石文化や九谷焼などの工芸、小松製作所に象徴される工業の厚み。あるいは、駅前に根づく街の文化や、祭り、歌舞伎、商いの継承など。
どれもが声高に語られなくても、日常の中にしっかりと根付いている。最も印象的だったのは、「創作性」が特別な場面ではなく、日々の暮らしに含まれているという感覚だった。日々の営みの中にあるものづくりと美意識。その静かな強さこそが、小松の魅力なのだと感じた。

町との距離を縮めるために

もともと1階には白いガレージがあり、正面から見ると町家としては違和感があるつくりとなっていた。同時にこれを活かすことで町と宿との関係が変わる予感があった。町家の入り口を、町に開いてカフェとフロントの核にする。その選択によって、通りの気配が中へと流れ込み、人と街の距離がぐっと近づいた。
茶舗やコーヒー店と連携し、味覚を通して町を覚えてもらうこと。九谷焼をはじめとした工芸に触れ、手に取れる導線を用意すること。小松を愛するブックストアに選書いただいた本棚を、場の中心に据えること。どれも「説明しすぎない」かたちで小松の町に触れてもらう工夫である。気づけばうれしい。そのくらいの温度で、町の物語を点在させている。

元々ガレージだったところをチェックインカウンター&カフェに
元々ガレージだったところをチェックインカウンター&カフェに
小松の手触りが宿る小松イ草の畳と上出長右衛門窯の茶器
小松の手触りが宿る小松イ草の畳と上出長右衛門窯の茶器
鬼瓦職人・鬼x笑が手がけたオブジェ
鬼瓦職人・鬼x笑が手がけたオブジェ

受け継がれてきた文化と新たな感性が静かに交わる空間

客室や共用部には、地域の暮らしの中で育まれてきた生活工芸や、小松にゆかりのある作家の作品を配している。上出長右衛門窯の茶器、最高品質の小松イ草で織られた小松畳。さらに、小松出身のアーティスト・小雪によるアートワークや、鬼瓦職人・鬼x笑が手がけたオブジェなど、この町に受け継がれてきた美意識と、いまの感覚が静かに重なり合うよう設計した。
飾るためではなく、使い、触れ、過ごすために。それぞれの存在が、滞在の時間にそっと溶け込みながら、小松の暮らしに根づく文化を、自然なかたちで伝えてくれる。

COLUMN担当者コラム

プロジェクトマネージャー寺内 稜

これからのKomado

宿は増やすことよりも、続いていくことのほうが難しい。Komadoは無理に広がることを選ばず、街のリズムに歩幅を合わせながら、少しずつ点を増やしていく。必要な時に、必要な場所に、必要なかたちで。流行や話題に合わせて姿を変えるのではなく、ここで過ぎていく時間の中で、街や人の暮らしに自然と馴染んでいくことを選んだ。派手ではないけれど、なぜか忘れられない。そんな時間が、小松には似合う気がする。Komadoはこれからも、街の日々をそっと覗く窓として、静かに開き続けていく。

INFO

オーナー

株式会社小松DMC

オペレーター

株式会社小松企画

所在地

石川県小松市龍助町29−1

時期

2025年10月16日オープン

用途

分散型ホテル

客室数

3室

SCOPE

  • ホテル開発
  • WEB制作
  • 空間デザイン
  • コンセプト策定
  • 体験コンテンツ設計
  • ロゴ・ネーミング制作
  • オペレーション設計

CREDIT

  • プロジェクトマネージャー寺内 稜
  • プロジェクトマネージャー笠井 明
  • ブランドディレクター・コピーライター荒木 拓也
  • プロデューサー大丸 勇気
  • プロジェクトアシスタント萩原 萌々香

PARTNER

株式会社小松DMC ひとともり一級建築事務所 株式会社ADF Sitoh.inc
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